ラカンを学ぶセミネール


精神分析の理論と実践

科学の諸領域においては,理論と実践とは不可分の相互関係にあります.実践において新たな出来事が見出されれば,それを説明するための理論が立てられます.新たな理論が考案されれば,それを検証するための実践が為されます.そのように,科学においては理論と実践は相互促進的に展開されて行きます.

精神分析においては,しかし,同じようには行きません.なぜなら,精神分析の実践は主体自身の存在にかかわるからであり,しかも,その際,「存在の真理については,それが惹起する不安のゆえに,何も知りたくない」という無知の熱情 — フロイトが「抵抗」と呼んだもの — が働くからです.

その事実に十分に自覚的でない精神分析の理論は,したがって,精神分析の実践を存在の真理から遠ざけてしまうことになります.それが,フロイト以後の精神分析の諸学派において起きたことです.

ラカンは,精神分析においてかかわる真理に対して目を閉ざしていた精神分析家たちを目覚めさせるために,1951年から彼のセミネールを開始しました.精神分析において存在の真理が己れを顕し得るよう,実践を正しく導くことを,彼は目ざしました.そして,そのために最も根本的なよりどころのひとつとしたのは,ハイデガーの存在論でした.

ハイデガーは,「存在の意味に関する問い」と呼んだ問いに対して,1927年の『存在と時間』において,答えを提示したのではなく,その問いを,まさに問われるべき問いとして提起しました.彼の生涯全体は,その問いを問いとして存続させることにほかなりませんでした.

精神分析において問われる問題は,まさに主体自身の「存在の意味」です.ハイデガー自身の1936年以降の用語法にしたがって,それを「存在の真理」と呼び直しておきましょう.あなた自身の存在の真理の知,それが精神分析においてかかわる知です.

では,その知は,精神分析の理論を学ぶことによって得られるものか? いいえ,存在の真理の知の伝達は,単に机上ではなく,自分自身の精神分析の経験そのものを通じてしか可能ではありません.

しかし,一般社会に対して精神分析を現在化する東京ラカン塾の機能において,我々は,精神分析においてかかわる存在の真理に関して問い続けます.つまり我々は,ラカンが彼のセミネールにおいて問い続けた問いを引き継いで,問い続けるのです.

東京ラカン塾の精神分析セミネール

そのため,東京ラカン塾は,ラカンにならって,一般に公開されたセミネールを行っています.存在の真理の問いはあらゆる人間にかかわることだからです.

原則的にどなたでも参加可能です.事前の申請や登録は必要ありません.参加費は無料です.

開講回数は年間25-30回の予定です.
日時:金曜日,19:30 - 21:00
場所:原則的に文京区民センター(文京区本郷 4-15-4).
ただし,11月18日は例外的に文京シビックセンター(文京区春日 1-16-21)です.
使用する部屋はそのときどきの事情により一定していません.御注意ください.

東京ラカン塾精神分析セミネール 2016-2017年度「言説の構造」

2016-2017年度第一学期は,2016年10月21日に開始の予定です.

今期取り上げるテクストは,Lacan の1969-1970年の Séminaire XVII L'envers de la psychanalyse[精神分析の裏]です.そこにおいて Lacan は,支配者の言説,分析家の言説,大学の言説,hysterica の言説から成る les quatre discours[四つの言説]の構造を初めて提示し,さらに,Freud の『モーゼと一神教』の再検討によって「父の名」の問題を改めて思考しています.

2016-2017年度第一学期の予定:
10月21日,文京区民センター 3 階 C 会議室
10月28日,文京区民センター 2 階 C 会議室
11月04日は休講
11月11日,文京区民センター 2 階 C 会議室
11月18日,文京シビックセンター 3 階 B 会議室
11月28日,文京区民センター 2 階 C 会議室
12月 : 02日,09日,16日(使用する部屋は未定)

第二学期は 2017年01月06日に開始する予定です.

テクストは各自持参してください.Seuil 版と Staferla 版の二種類があります.Staferla 版は必ず用意してください.

Seuil 版テクストの入手の困難な方は,わたしへ御連絡ください : ogswrs@gmail.com

Staferla 版テクストは,ここから download することができます.

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