2016年秋の特別企画
東京ラカン塾ワークショップ: ラカンへの回帰
Workshop de l'Ecole lacanienne de Tokyo : Retour à Lacan
– 翻訳や解説ではなく,Lacan のテクストそのものをみづから読んでみよう!
日時 : 2016年10月16日 (日曜日), 10:00 - 18:00
場所:文京シビックセンター内 3 階 C 会議室
参加費 : 1000円(当日,現金でお支払いください)
申込:東京ラカン塾主宰,小笠原晋也へ e-mail でお申し込みください : ogswrs@gmail.com
1950年代,Lacan は,彼の教えの出発点に,retour à Freud[フロィトへの回帰]の標語を掲げました.なぜ,わざわざそうしたのか?
当時,精神分析の主流を成していた ego psychology[自我心理学]を標榜する分析家たちは「無意識」や「死の本能」などの Freud
の諸概念をそれらの本質において省みること無く,かくして,精神分析は単なる心理療法や therapy のなかの一技法へ堕していました.精神分析をその真理において取り戻すためには,まずは,精神分析の創始者
Freud のテクストを Freud が書いたとおりにドイツ語で読み直すことから再出発しなければならない.それが Lacan の「フロィトへの回帰」の意図です.
Lacan の没後35年がたった今,世界的に,lacanien[ラカン派]を標榜する精神分析家たちについて,かつての自我心理学の信奉者たちと同様のことが妥当しています.難解な
Lacan のテクストをみづから読解しようと努力することを怠り,Jacques-Alain Miller を始めとする解説者たちによる出来あいの説明を鵜呑みにし,オウム返しするだけ.その結果,ラカン派を自称する精神分析家たちが新たな自我心理学へ陥る危険性が生じてきています.
かくして,精神分析をその真理においてみづから思考し直すために,今や retour à Lacan[ラカンへの回帰]のスローガンを掲げるべき時です.
Lacan は,フランス語で語り,書きました.フランス語が読めないことを理由に,英語や日本語の翻訳や解説を読んでいるだけでは,本当に Lacan
と取り組むことはできません.
そも,翻訳者や解説者の大多数は,みづから精神分析を経験していないので,Lacan が何について語っているのかを身をもって把握することができていません.既成の翻訳書や解説書が幾多の誤訳や無理解を含んでいるのは,おもにそのためです.
また,Lacan が用いるフランス語表現に含まれる本当の意義を訳文から読み取ることは,原理的に言って,不可能です.
確かに,Lacan のテクストは,フランス人にとってさえ理解困難であり,その読解には多大な努力が必要です.また,我々日本語を母国語とする者がフランス語を習得するにも,それなりの努力が必要です.しかし,努力を惜しんでいては,Lacan
をみづから読むことはいつまでたってもできません.
そこで,東京ラカン塾では,Lacan のテクストをみづから読み解く訓練の機会を,いわゆる workshop の形式で提供することにしました.
参加者数は十数人以内とします.そのうち 4 - 6 人が,皆の前で,実際に Lacan のテクストの一節の読解を試みます.同時に,わたしが適宜,助言や解説を提供しつつ,読解作業を手伝います.
ただ,「フランス語原文を読む」と限定すると,参加可能な人の数が非常に限られてしまうでしょう.ですから,フランス語原文だけでなく,邦訳や英訳で読むということでもかまいません.
Lacan のテクストのどの一節を読むかは,各人の選択にまかせます.適当な一節を選び出すのが困難であれば,わたしが助言します.
ひとりの読解作業に 60 - 90分程度かけることを想定しています.その時間でどれほどの量の文章を読むことができるかは,当該箇所の内容次第です.たった一行読むにも何時間も必要となるかもしれません.
ほかの参加者の参考となるよう自分の読解作業過程を提供してもよいと思う方は,申込の際にその旨を書き添えてください.
参加希望者は,わたしへ御連絡ください : ogswrs@gmail.com
東京ラカン塾主宰,小笠原晋也